第88号 シンポジウム4.13 地方から チベット声明 イラク控訴審

無関心は、再び戦争できる体制に
協力することと同じ! 闘いを!
4.13「月桃の花」上映会と沖縄問題を考えるシンポジウム
●シンポジウムパネラー
 連帯労組・関西地区生コン支部 武建一委員長
 月刊『世界』 岡本厚編集長
 沖縄平和ツア−企画・ガイド 真栄田(まえだ)義且氏
 社民党 保坂展人衆議院議員


4月13日、「エルおおさか」において、「月桃の花」上映会と高校歴史教科書問題を考える「4・13シンポジウム」が開催された。主催は、連帯労組近畿地方本部が母体となっている「検定意見の撤回を求める会・関西」

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映画「月桃の花」から沖縄戦の実態を学ぶ

 シンポジウムでははじめに、映画「月桃の花」を鑑賞。ここでは、沖縄戦の実態が住民の視点で描かれており、住民が日本軍国主義によって「強制集団死」へと追いつめられていく状況が生々しく映し出されていた。

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パネル・ディスカッション

映画上映の後、パネル・ディスカッションが行われた。以下、パネラ−の発言と討論の要旨を紹介する。

政府の戦争国家化・人権抑制路線と対決しなければ
労働組合の社会的存在感は失われてしまう

 冒頭、武委員長が、次のように、この問題を取り組むことになった経過や労働組合としての闘いの決意を述べた。
「昨年からの沖縄県民の闘いの盛り上がりなどを受けて、検定意見撤回の運動を取り組むことを決定した。これまで、沖縄戦の実態についての学習、各自治体・教育委員会への働きかけ、現地視察などを実施。政府による戦争国家化・国民の人権抑制路線と対決しなければ労働組合の社会的存在感は失われてしまうと考え、全力でこの運動に取り組んでいる。今、日本は間違った方向に進もうとしている。我々はたった千数百人の労働組合だが、世の中の変革は少数の者から始まるものだ。どんな風圧があっても闘い抜きたい。」
 保坂議員は、この問題が起こったのは、安倍前首相の影響が非常に強いと指摘。さらに、文部科学大臣との委員会でのやりとりや、沖縄戦体験者の証言などを紹介した。
 岡本編集長は、いわゆる大江・岩波書店沖縄戦裁判について詳しく報告した。裁判では、第1審で「集団自決に軍関与があった」という完全勝利判決を勝ち取ったこと、裁判の経過、今なぜこの訴訟が起こされたのかなどを述べ、「この裁判で本当に問われたのは、(日本を再び戦争する国にするのかどうかという)現在と未来。また、検定意見は、第1審判決からして当然撤回すべきである。沖縄の人たちの気持ちを受け、高裁・最高裁でも一歩も引かず闘っていきたい」と決意を語った。
 真栄田氏は、自らの戦争体験を報告。軍隊のいなかった沖縄に戦争末期になって9万人もの部隊が入ってきたこと、それによって、沖縄の子どもたちは集団疎開することになり、その中で多くの子どもを乗せた疎開船が米軍の攻撃によって沈没したことなどを語った。そして、沖縄戦の実相を歪めているのは歴史教科書だけではなく、資料館や慰霊碑もそうであり、そういうものも住民の視点で沖縄戦の実態を正しく伝えるものに変えていくことが必要と強調した。

大江・岩波書店沖縄戦
裁判の狙いはどこに

 4人の話の中で特に印象的だったのは、大江・岩波書店沖縄戦裁判のことだ。
 岡本編集長の話によると、昨年11月の裁判の中で、原告である元隊長は「『沖縄ノート』をいつ読みましたか?」の質問に、「去年(2007年のこと)読みました。一応念のため」と答えたというのだ。提訴は2005年8月である。これでは本も読まずに提訴したことになる。さらに、「『沖縄ノート』で、あなたが集団自決を命じたという記述がありますか?」の質問には「ありません」と答えたという。
 第1審判決で原告の請求が棄却されるのは当然だが、こんな無茶苦茶な「雑な」裁判があるのかと、本当に驚いた。
 つまり、原告側の狙いは当初から裁判に勝つことではなかったのだ。教科書から「軍の強制」を削除することが第一目標であったのは間違いないだろう。それは、この裁判の訴状が検定意見の根拠となっていることからも明らかだ。文科省は、このような無理を承知で検定意見を付け、教科書を書き換えさせたと言える。こんなことが許されるはずがない。
 その狙いは何か。これも岡本編集長が端的に指摘していた通り、「日本軍の名誉を回復すること」であり、さらには国民に再び愛国心・殉国精神を植え付けることである。そして日本を再び「戦争のできる国」に変えることである。

教科書検定意見撤回の
運動の意義

 シンポジウムの中で、武委員長はこの運動の意義を以下のように語った。
「一つ、歴史の改ざんは、過去の侵略戦争と軍隊の美化を意味している。この問題に無関心であるということは、再び戦争できる体制に協力することと同じである。軍国主義と民主主義は決して両立するものではなく、国民の基本的人権侵害の最たるものである。
 いま一つは、過去の歴史から学ぶこと。現在政府は日米軍事同盟強化、憲法改悪を進めている。今、国民は憲法によって守られている。しかし、今、政府がやろうとしていることは、国民に義務を強要し、国民の権利を抑制し、憲法を改悪すること。これは平和に対する対決そのものである。
 三つは、グローバリズム・市場原理主義の行き着くところは、一部特権階級の利益のため多くの国民を犠牲にする路線であり、これは経済的格差だけでなく、政治的・文化的・教育的全ての分野における格差をつくり出している。すなわち、人間の共同体社会そのものを崩壊させる道である。まさにこれは人道主義に反するものである。
 四つは、民主主義制度の否定は、軍事大国・重税・福祉破壊・雇用破壊・賃金破壊の道であり、これと対決し闘わなければ、労働組合の社会的存在感は失われてしまうのである。
 五つ目、したがって、経済闘争以上に重要な政治的テーマであると同時に、これは人々の暮らしや生活、中小企業・商工業者・農民などの経営を破壊するものである。
 であるならば、我々が人力・組織力を挙げてこの闘いに傾注する価値のあるものである。」

これからの日本の
針路を問う闘い

 教科書検定意見撤回の運動は、歴史の改ざんをゆるさない闘いであり、日本の戦争国家化に対する反撃である。それは、まさにこれからの日本の針路を問う闘いである。当然、この闘いは、教科書検定制度や日本の教育そのものを問い、米軍再編と辺野古新米軍基地建設阻止を、その先には日米安保破棄、在日米軍基地撤去をも見据えている。
 そうした明確な方針を持って、労働組合がこの運動を担っていることに大きな可能性を感じた。この闘いを全国の労働者・中小経営者・農民・学生など、あらゆる階層に広めよう。(大阪H)
地方からの報告 …………………………………………………(20)
野生動物との共生を考える

野添憲治

人間の都合のみで殺されるツキノワグマ

 わたしの住む北国ではようやく冬も去り、浅春になった。ことしの冬は積雪が少なかったものの、寒さは例年より厳しかっただけに、春の到来は嬉しい。木々の芽吹きにはまだ早いが、この号が読者の手に着くころは、野山に緑が濃くなっているだろう。
 例年、真冬の中にいくらか春が感じられる三月中旬から下旬にかけて、里山にクマが出没する。本州では唯一の猛獣とされるクマが確認されると、猟友会などが出動してテレビや新聞のニュースになった。クマの出没が春の訪れを知らせてもいた。
 山村で暮らす人たちにとって、クマは脅威であり、危険な存在である。秋田県の調査では、過去一〇年間の人的被害は年平均で七・四人となっている。また、クマは田畑の作物を荒らしたりする害獣でもあり、山村に人口が激増した近代では有害駆除の対象となった。秋田県内で過去一〇年間の年平均では、果汁や野菜、養蜂など農林業への被害額は、千〜二千万円と見込まれている。全体ではそれほど多い額ではないが、熊は数カ所を集中して襲うため、農家によっては収穫が半分近くも被害を受けることもある。そのためクマは、人目につくと猟友会員などに射殺されてしまう。近年は山野の荒廃がすすみ、山林と里山の区別がつかなくなっているが、それがわからなくて人家の近くに出てきたとたんに殺されるという、ある意味ではかなり可哀想な存在である。

マタギやアイヌの人たちの生き方

 だが、わたしたちの先人のクマに対応する姿は、現在とかなり違っていた。その典型的なのがマタギで、一定数だけ捕ると、あとは種の保存のためにやめた。これはクマだけではなく、川魚とか山菜を取る時もそうだった。野山から永続的に「幸」を恵んで貰うために乱獲はしないで、一定量を取るとあとは残した。アイヌの人たちの捕獲も同じだったことが、記録に残されている。猛獣とされるクマにも生存権があることを認め、しかもそのクマは人間にとって危険であると同時に、そのクマを食料にしている側面もあり、種の保存のためにも共存を認めようというやり方で取っていた。この考え方が守られなくなったために、春先にクマが出没すると、子グマ・親グマの区別もなく有害駆除の対象にして射殺してしまうのである。

野生動物の保護が徹底したアラスカ

 近年は世界の各国で、野生動物にたいする保護が厳しくなっている。作家の西木正明さんがよく出向いているアラスカは、世界でも有数の人口過疎地で、人間の数よりも野生動物の数が多いといわれている。そうした土地でも野生動物の保護が徹底しているという。アラスカといえばクマの中でも最大といわれるアラスカヒグマのいる土地で、大きいものでは体重六〇〇キロ、体長三メートル近くになる。食性は雑食だが、基本的には肉食、春先とか冬眠前の晩秋には、人間をも攻撃の対象とするほど凶暴である。このアラスカヒグマも保護の対象になっており、ヒグマの保護区に入る時は、いかなる人間も銃を持ち込めないという。「だから人々は春先や晩秋、クマが出没すると思われる場所に入る場合、それなりの準備をして行く。だがここでも、うかつにクマを殺すとあとが大変だ。人間にたいするのと同じように、正当防衛であることを証明しなければならない。それができないと刑法に触れ、しばらく塀の中に住まうことになる」(「『春グマ』の季節に」)という。
 日本の本州に生息するのはツキノワグマだが、これがどんどん減ってきており、種の保存さえ難しくなる事態になりかねないと危惧されている。ことしの春に里山へクマの出没がなかったのも、その一つではないかと心配されている。ツキノワグマの保護策は都道府県によっても異なるが十分とはいわれず、アラスカヒグマなどにくらべると野放し状態といっていいだろう。

クマから生き方を教わる

 もちろん、山村住民の安全と生活の安泰が最優先されなければいけないのは当然だ。しかし、少しの工夫と注意をすることで、野生動物との共存が可能になる。人びとが春先や晩秋に奥山へ入る時に、クマに人がいることを知らせる鈴を持っていくとか、一〇分おきくらいに大きな声をたてるなどしたら、ツキノワグマは人を避けて通り過ぎるだろう。そんな工夫もしないで野山に入り、歩く人のなんと多いことか。野山を歩いた時にそんな人たちに会い、驚くことがよくある。また、食事をしたあとに、食べきれなかった弁当やパンなどを近くに捨てていく人も多い。一度それを食べて味を覚えたクマは、人間のそばに行くと食べられるだろうと、逆に近づいていく場合もあるようだ。人間の方に、生きていく工夫が足りないのだ。しかし、クマに怪我をさせられると、すべてクマの責任にさせてしまう人間の身勝手さ。また、クマの食料となるブナやミズナラなどの広葉樹を次々と伐り、食糧不足にクマを追いやる林政。人間、もっと工夫しながら生きなければと、ことしの春にクマから教わった。

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「編集部よりお礼」

ご案内のように、4月19日、野添さんの『シリーズ・花岡事件の人たち』完結記念シンポジュームと出版パーテイは、多くの方々が駆けつけて大盛況でした。「未来」の読者の皆様にも参加頂き、お礼申し上げます。


               
14世ダライ・ラマ法王と中国政府首脳との
直接対話を求める声明文


私たち日本の文化人有志一同は、
1、過去48年にも及ぶ苛酷な亡命生活の中で「愛と非暴力」の姿勢を貫き、 ノーベル平和賞を受賞された14世ダライ・ラマ法王を強く支持する者として、
2、チベット伝統文化の奥深さを学び、その叡智が未来の地球にいかに貴重なものであるかを理解する者として、
3、強大な経済力を背景に中国政府が進めるチベット中国化政策がチベット人民にとって、伝統文化を破壊する屈辱的なものであることを知る者として、今、中国政府がチベット本国でチベット人民に加えている、激しい人権弾圧に対して、深い憂いと強い憤りと悲しみを覚えるものです。
 「宗教者の仮面を被った狼、ダライ・ラマ法王に扇動された一部チベット人に依る暴力的反政府破壊活動」という中国政府のキャンペーンが、いかに真実とかけ離れたものであるかは、私たちにもはっきりとわかります。厳しい情報統制の下で武力弾圧を加えながら、この様な偽りのキャンペーンを繰り返すことは、決して中国政府、中国人民のためにもなりません。
 私たちは、中国政府が今すぐ、チベット人民に対する人権弾圧を止めることを求めます。
 そして、中国政府首脳が国際的な仲介者の下で14世ダライ・ラマ法王と一日も早く直接会い、胸襟を開き、互いを尊重する立場で、真心をもって話し合われることを心から求めます。
 それが、今起こっている不幸な事態を乗り越えるための、チベット民族、中国政府双方にとって有益な道であると信じるからです。又、それこそ中国政府が世界の信頼を取り戻すことのできる唯一の道だと考えます。
 中国政府首脳は、できるだけすみやかに14世ダライ・ラマ法王と直接会い、対話を始めて下さい。
日本国政府は、中国政府首脳と14世ダライ・ラマ法王との直接対話が実現するよう、あらゆる外交手段を使って働きかけて下さい。又、その対話が中国政府、チベット民族双方にとって、有益なものとなるよう、支援して下さい。
【賛同者】有田芳生(ジャーナリスト)/生島ヒロシ(キャスター)/池澤夏樹(作家)/池辺晋一郎(作曲家)/市川森一(脚本家)/イルカ(歌手・IUCN親善大使)/UA(歌手)/植島啓司(宗教人類学者)/上田紀行(東京工業大学准教授)/上野圭一(翻訳家)/榎木孝明(俳優)/加藤タキ(コーディネーター)/加藤登紀子(歌手・UNEP親善大使)/角川春樹(映画プロデューサー)/鎌田東二(京都大学教授)/亀渕友香(ゴスペル・シンガー)/川原亜矢子(女優・モデル)/木内みどり(女優)/樹木希林(女優)/岸 恵子(女優・作家)/喜納昌吉(音楽家)/小林研一郎(指揮者)/三枝成彰(作曲家)/酒井政利(音楽プロデューサー)/堺 正章(俳優)/佐治晴夫(鈴鹿短期大学学長)/佐藤富雄(作家・冒険写真家・薬学博士)/志村史夫(物理学者)/下村満子(ジャーナリスト)/白鳥英美子(歌手)/鈴木エドワード(建築家)/竹村真一(京都造形芸術大学教授)/田中章義(歌人)/谷川俊太郎(著述業)/つのだたかし(音楽家)/デーブ・スペクター(放送プロデューサー)/天外伺朗(作家)/富田佑弘(脚本家)/中嶋朋子(女優)/名嘉睦稔(画家)/中森じゅあん(算命学・サイコセラピスト)/西蔵ツワン(医学博士)/野中ともよ(ガイア・イニシアティブ代表)/鳩山 幸(ライフコーディネーター)/早見 優(歌手)/原田真二(音楽家)/ピーター・バラカン(ブロードキャスター)/日野原重明(医学博士)/広瀬洋一(大学教授)/フランソワーズ・モレシャン(ファッション・エッセイスト)/細川佳代子(スペシャル・オリンピックス名誉会長)/細野晴臣(音楽家)/槇小奈帆(歌手)/真鍋圭子(音楽プロデューサー)/美内すずえ(漫画家)/ミッキー吉野(音楽家)/宮本亜門(演出家)/村上和雄(筑波大学名誉教授)/米良美一(歌手)/山折哲雄(宗教学者)/湯川れい子(音楽評論・作詞家)/吉田照美(パーソナリティ)/ロバート・ハリス(作家・DJ)/渡辺貞夫(音楽家)/龍村 仁(映画監督) 計65名

「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会・名古屋」
控訴審判決、空自のイラク活動に違憲判断
「平和的生存権」でも前進

杉山隆保
 
イラク派兵違憲訴訟の会・東京 元原告
 平和に生きる権利の確立をめざす懇談会(平権懇)運営委員

 4月17日の「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会・名古屋」の控訴審判決で米兵の輸送などを行っている航空自衛隊の活動について「憲法9条1項に反する」との判断が示されました。また、「平和的生存権」について「憲法9条に違反する国の行為、すなわち戦争の遂行、武力の行使等や、戦争の準備行為等によって、個人の生命、自由が侵害され又は侵害の危機にさらされるような場合、また、憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担・協力を強制されるような場合には、平和的生存権の主として自由権的な態様の表れとして、裁判所に対して当該違憲行為の差止請求や損害賠償請求等の方法により救済をもとめることができる」として具体的権利性を認めた「画期的な判決」でした。
 違憲判断は示されましたが「違憲判決」が出された訳ではありません。現在、継続している宮城の住民訴訟、岡山の訴訟(一審)、北海道の控訴審、熊本の控訴審のいずれかでなんとしても違憲判決を勝ち取りたいものです。
 
■東京でも100人でリレ−提訴
「イラク派兵違憲訴訟」は全国で一つの訴訟団ではなく11の地域で12の訴訟が提起されました。私たち、東京では前例のない「本人訴訟で100人のリレー提訴」に取り組み8人が上告審まで闘いました。
 東京訴訟の契機はNさんの「軍事費強制徴収事件」でした。2003年11月の一審敗訴直前にNさんは「控訴はしない。自衛隊のイラク派兵に対して違憲訴訟を起こしたい」と希望を述べました。この訴訟を支えていた「良心的軍事費拒否の会」「日本友和会」「平和のための裁判を考える会」「テロ特措法・海外派兵は違憲 市民平和訴訟の会」などで議論を始めました。翌年1月になると元郵政大臣の箕輪登さんが北海道で提訴。続いて名古屋が集団訴訟をめざして原告の募集を開始しました。
 東京ではこれまでの違憲訴訟の経験から“門前払い”をいかに避けるのか、と、裁判所に違憲判断を迫る新しい論理構築が議論の中心でした。そして3月17日から土、日を除いて「本人訴訟でリレ−提訴」が開始されました。提訴は第20回参議院議員選挙の投票日直前まで続き、原告は約100人なりました。
 05年10月を皮切りに、次々と一審判決が出始めました。一部で「精神的被害も損害賠償の対象となりうる」との判断を得ましたが、結果は違憲判断:却下、損害賠償棄却というものでした。9人が控訴し、8人が上告しましたがすべて棄却されました。しかし、国民が司法を活用して選挙以外の方法でも国の政策に異議を唱えられることを実証しました。そして、今回、本人訴訟に取り組んだ原告らは大きな経験と力量を蓄えました。

■差し止め請求を認定すべきだった
 今回、判決理由で違憲判断が示されたが、国は勝訴し、原告が上告しないために判決は確定します。
 前述したように裁判所は「違憲判決」を避け続けています。小泉純一郎元首相の「福岡靖国訴訟」では原告側敗訴ですが違憲判断は示されました。今回も同じように判断が示されたわけです。
 あまりにも最高裁が「違憲判決」を避け続けているがために下級審では判決理由で違憲判断を求める動きが出てきています。現に「自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本」では原告側主尋問で代理人が小林武(愛知大学大学院教授)証人に対して「判決理由の中で違憲判断を示すことが有効であるか」と聞いています。
 青山邦夫裁判長は今回、あれだけ事実認定し、判決理由で違憲判断をしたのですから差し止め請求を認定すべきだったのです。たとえ、青山裁判長が最高裁の“反動性”を憂慮し、国側を勝たせることによって上告を断念させる思いがあったとしても。
 今回、テレビニュースで流れた法廷場面で裁判長席に座っていたのが青山裁判長と見た視聴者は多いと思います。青山裁判長は判決を書き依願退職していたのです。テレビで裁判長席で判決文を代読した別の裁判長でした。裁判官は退官直前や「依願退職」を決意しないと「違憲判決」や違憲判断を示せないというのは異常です。裁判官が法と良心にしたがい自由に判断・判決を示せる土壌を作らなければならないと考えました。

■追記
 この原稿を出稿した翌日、新聞各紙の朝刊は砂川事件の最高裁大法廷判決前に、当時の駐日米大使と最高裁長官が密談していたことを示す文書が、米国立公文書館で見つかったことを報じました。司法の独立が侵されていることを改め知らされました。  2008.4.29


 第88号 シンポジウム4.13 地方から チベット声明 イラク控訴審