第88号(2008年5月号)名古屋高裁 イラク派兵違憲判決確定

名古屋高裁 イラク派兵違憲判決確定
福田自公政府は直ちにイラクから撤兵せよ!

 4月17日、名古屋高等裁判所民事第3部(青山邦夫裁判長)において、「自衛隊のイラク派兵差し止め訴訟」控訴審の判決が出されました。判決は、「自衛隊の活動、特に航空自衛隊がイラクで現在行っている米兵等の輸送活動は、他国による武力行使と一体化したものであり。イラク特措法2条2項、同3項、かつ憲法9条1項に違反する」との判断を下しました。また、判決は、平和的生存権は、単に憲法上の基本精神や理念を表明したものにとどまるものでないとして、平和的生存権の具体的権利性を認めました。
 そして5月3日の日本国憲法施行から61周年を前にした2日、原告側が上告をしないことを決定し、この画期的判決が確定しました。
 自衛隊を違憲とした1973年の長沼ナイキ訴訟の札幌地裁判決、米軍駐留違憲とした1959年の砂川事件・伊達判決が、いずれも上級審で覆された。この歴史的経過をみれば、今回の判決確定は、原告が求めていた「派兵差し止めと慰謝料請求」についてはいずれも棄却されたとはいえ、実質的な勝利判決であり、全国各地で行われた同訴訟では初めての、それのみならず憲法制定後初の、歴史的意義をもつ画期的判決といえます。
 わたしたちの仲間の多くが原告となった「イラク派兵違憲訴訟・東京」(共同代表・尾形憲他)はじめ全国11カ所、5000名を越える原告とともに、この歴史的な違憲判決を喜びたい。(関連記事3ペイジ下段に)
 この歴史的判決に対して、福田首相は「傍論だ、裁判のためどうこうする考えはない」と述べ、航空自衛隊のトップ田母神(たもがみ)航空幕僚長は「そんなの関係ねえ」と暴言を吐いています。
 この歴史的違憲判決を力に、イラクからの自衛隊の即時撤兵と海外派兵恒久法制定策動を阻止する行動を起こそう!
 対米追随の米軍再編、後期高齢者医療制度の実施、ガソリン税の「暫定税率」の復活、光熱費、食糧・生活物資の値上げなどを強行する福田政権の支持率は20%に落ち、末期症状の政権としては総辞職するか解散・総選挙に打って出るか、それとも野垂れ死ぬしかない。
 憲法原則を無視する福田自公政権を打倒しよう!


歴史的違憲判決を力に新たな行動を
声明(要旨)

第1 画期的な違憲判決である

 判決は、自衛隊がイラクへ派兵された後の4年にわたって、控訴人らが主張してきたイラク戦争の実態と自衛隊がイラク戦争の中でどのような役割を果たしているかの証拠を踏まえて詳細な認定を行い、委託特措法及び憲法9条との適合性を検討し、結果、正面から自衛隊のイラクでの活動が違憲であるとの司法判断を下したものである。
 この違憲判決は、日本国憲法制定以来、日本国憲法の根本原理である平和主義の意味を正確に捉え、それを政府の行為に適用したもので、憲政史上最も優れた、画期的な判決であると評価できる。判決は、結論として控訴人の請求を退けたものの、原告らを始め日本国憲法の平和主義及び憲法9条の価値を信じ、司法に違憲の政府の行為の統制を求めた全ての人々にとって、極めて価値の高い実質的な勝訴判決と評価できるものである。
  
第2 自衛隊イラク派兵差し止め訴訟の意義

 今回のイラクへの自衛隊の派兵は、第一は、アメリカ、ブッシュ政権のイラク戦争が明らかに違法な侵略戦争であり、自衛隊のイラク派兵はその違法な侵略戦争に加担するもの。第二は、自衛隊のイラク派兵は、日本国憲法下においてはじめて「戦闘地域」に自衛隊が展開し、米軍の武力行使と一体化する軍事活動であり、これは日本がイラク戦争に実質的に参戦したことを意味している。この裁判は、自衛隊のイラク派兵が、日本国憲法9条に違反し、日本国憲法が全世界の国民に保障している平和的生存権を侵害していると原告らが日本政府を相手に訴えたものである。
 日本政府は、国会でもイラクで自衛隊が行っている活動の詳細を明らかにせず、実際には参戦と評価できる活動をしている事実を覆い隠し、本訴訟においても事実関係については全く認否すら行わない異常な態度を最後まで貫いた。国民には秘密の内に、憲法違反の自衛隊派兵の既成事実を積み重ねようとする許しがたい態度である。
 私たちはこの裁判で、自衛隊の活動の実態を明らかにするとともに、日本政府が国民を欺いたままイラク戦争に参戦していることを主張、立証してきた。そしてまた、政府が立法府にも国民にも情報を開示しないまま、米軍と海外で戦争をし続ける国作りを着々と進めている現実の危険性を繰り返し主張してきた。そして、今、行政府のこの暴走を食い止めるのは、憲法を守る最後の砦としての役割が課せられている司法府の責任であることを強く主張してきた。

第3 憲法と良心にしたがった歴史的判決

 判決は、憲法9条の規範的意味を正確に示した上で、航空自衛隊が現実に行っている米兵の輸送活動を、憲法9条が禁止する「武力行使」と認定し、明らかに憲法に違反していると判断した。
 自衛隊の違憲性については、過去に長沼ナイキ基地訴訟第一審判決(札幌地裁昭48・9・7)で自衛隊を違憲とした判断が唯一見られるだけで、ましてや、高裁段階の判断としては、本日の名古屋高裁民事第3部の判決が戦後唯一のものである。
 本判決は、我が国の憲法裁判史上、高く評価される歴史的判決として長く記憶されることになるであろう。
 イラクへの自衛隊派遣を違憲とした本判決は、現在、議論されている自衛隊の海外派兵を前提とする様々な活動について、憲法違反に該当しないかどうかについての慎重な審議を要求することになる。憲法との緊張関係を無視して違憲の既成事実を積み重ねるためにイラク特措法を制定し、国会での審議すら実質上無視するような政府の姿勢は厳しく断罪されなければならない。この判決を機に自衛隊の存在とその活動について憲法の立場から厳しくチェックがなされなければならない。
 この判決は、この裁判の原告となった3000名を越える市民(全国の同種訴訟に立ち上がった5000名を越える市民)が声を上げ続けた結果、生み出されたものである。日本と世界の市民の平和を希求する思いがこの判決を生み出したのである。さらに、日本国憲法、とりわけ憲法9条がなければ出されることのない判決である。
 この判決は、平和を希求する市民が日本の平和憲法の力を活かした結果生み出したものである。日本国憲法の価値を示す画期的な判決として、この判決を平和を願う全ての市民とともに喜びたい。

第4 自衛隊はイラクからの撤兵を

 我が国は三権分立を統治原理とし、かつ法の支配を統治原理としている立憲民主主義国家である。三権の一つであり、かつ高等裁判所が下した司法判断は、法の支配の下では最大限尊重されるべきである。行政府は、立憲民主主義国家の統治機関として、自衛隊のイラク派兵が違憲であると示したこの司法判断に従う憲政上の義務がある。
 私たちは、今日このときから、この違憲判決を力に、自衛隊のイラクからの撤退を求める新たな行動を開始するとともに、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」し、「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」した日本国憲法の理念を実現するための行動を続けるものである。
 2008年4月17日

自衛隊イラク派兵差止訴訟の会
自衛隊イラク派兵差止訴訟弁護団


 第88号(2008年5月号)名古屋高裁 イラク派兵違憲判決確定