第86号 南の銀行 エクアドル新憲法 ボリビア災害 メキシコ農民デモ 地方から

国★際★情★報
「もう一つの中南米は可能だ!」
 
ベネズエラ、キューバ、ボリビア、ニカラグアが
「ALBA銀行」創設で合意
「南の銀行」創設に続き米支配からの脱却目指す
 「もう一つの世界は可能だ!」を合言葉に、世界社会フォーラムの世界同時行動デーであった1月26日、中南米では歴史的な合意が行われた。「米州ボリバル代替統合構想(ALBA)」の首脳会議が26日、ベネズエラで開かれ、ベネズエラ、キューバ、ボリビア、ニカラグアが「ALBA銀行」創設で合意した。12月の「南米銀行」創設に次いで、米国系金融機関から資金を引き揚げて「あらゆる分野で利益が見込めなくても公共性が高いと判断されるプロジェクトに融資を行う」新しい南側の金融機関を創設しようとするもの。また、加盟国共同で「エネルギー大公社」を設立することも確認されている。石油の試掘、採掘や精製、共同備蓄などを行うことも合意された。サブプライムローン問題による巨額損失から世界的な金融システム不安へと陥りつつあるグローバル資本主義の行き詰まりに揺れたダボス会議に対比して、「もう一つの中南米は可能だ!」ということがますます鮮明になりつつある。
 
■ベネズエラ大統領、米国から資金引き揚げ要請

 ALBA銀行は、資本主義にもとづく国際金融機関に代わるものと位置づけられ、地域統合推進と加盟国の経済、社会発展を目的としている。チャベス大統領は「(外貨準備を)なぜ、北(米国)に置いておかなければならないのか」と強調し、加盟各国に対し米国系金融機関からの資金の引き揚げを求めた。約10億ドル(約1070億円)を原資とするALBA銀行の創設で、各国の開発支援に充てるという。各国は石油や天然ガス、地熱発電への合弁企業の発足でも合意したほか、イランが南米諸国への金融支援を表明した。
 ベネズエラのチャベス大統領は閉会演説で、排除と貧困に対するたたかいと団結を呼びかけ、「ALBAは、資本主義が生み出す不平等のもとに一人の子どもも放置しないように、大きな努力をしなければならない」と強調。「社会主義によってのみ平等な社会を構築できる」と述べた。(2008.1.27AP通信、共同通信より)
追記 また、ベネズエラのチャベス大統領は27日、連帯関係にあるキューバやボリビアなど3カ国に対し、米国による地域侵攻の可能性を念頭に「軍事同盟」の結成を呼び掛けたと、AP通信が報じている。
南米エクアドル
新憲法制定へ
外国軍事基地撤去の憲法条項の提案
 昨年3月、世界の反基地諸団体を招き,共同して「外国軍事基地撤去国際大会」を首都キトで開催した「外国軍事基地の撤去を求める連合」が、1月31日に、進められている新憲法制定へ外国軍事基地撤去の憲法条項を提案しました。エクアドルのコレア大統領も、この国際大会に出席して、2009年に期限切れとなる米軍基地貸与協定を破棄し、同国マンタの米基地を撤去することを公約としています。
同連合の提案した憲法条項案の全文は、以下のように報道されています。「エクアドルは主権が行使されている平和の領土であり、外国軍事基地も外国軍も置かず、外国軍駐留の別の方法をもたらしうるいかなる協定も結ばない。エクアドルは、一方的あるいは他の国家との連携に基ずくものにせよ、他国の紛争に軍事的に関与しない。他の国家との軍事演習や訓練も行わない」
注―マンタの米軍基地は、米戦略体系では、太平洋からカリブ海にかけての前方展開拠点と位置付けられている。
ボリビア
ボリビア大統領、
先進国の地球環境破壊を批判
 ボリビアでは、中・東部赤道太平洋での海面温度が平均より低くなるラニーニャ現象を原因とする長雨による洪水が発生し、40人以上が死亡、2万世帯以上が家を失い、主要都市間道路が遮断。モラレス大頭領が非常事態宣言を発令し、28日の演説で、「母なる大地は、産業化政策のせいでひどく傷つけられている。人民が富裕者と先進諸国の代償を払わなければならないのは許されない」と災害の元凶である資本主義を批判しました。(ロイター)
キューバ
「NAFTAノー!
トウモロコシぬきに 国はない」と
農民13万人が抗議デモ
 北米自由協定(NAFTA)によって全ての農産物が、08年より完全輸入自由化されたメキシコ市で、「トウモロコシがなければ、国は滅びる」「農村とメキシコを救おう」「農産物の輸出入を投機資本の自由にさせない」と、全国農民連盟など全国から13万人が集結して抗議のデモが行われた。同日付けの新聞には、メキシコ市と5つの州政府の共同意見広告「農村の再生と主権、食糧安全保障を求める」が、掲載されたと報道されている。
  注−北米自由協定(NAFTA)は、1994年発効のカナダ、米国、メキシコの3国間の自由貿易協定。最後まで残っていたトウモロコシなどの農産物の関税が、08年1月に全て撤廃され、完全輸入自由化となった。
地方からの報告 …………………………………………………(18)
中小企業が最低賃金制を
 守れないのは誰の責任か

野添憲治

最低賃金制の実態

 二〇〇七年度の最低賃金は、中央最低賃金審議会の答申(目安は六円〜一九円の引き上げ)を受け、都道府県の労働局ではそれぞれ最低賃金審議会を開いて審議を進めた。確定した最低賃金は全国平均で時給六八七円で、前年度より一四円の引き上げとなった。いちばん高いのが東京都の七三九円、最低が秋田県や沖縄県の六一八円である。この額が発表された時に、最低賃金は高いか、それとも低いかが話題になったが、それも少しの間で、いまは話題になっていない。この最低賃金は高いのだろうか、それとも安いのだろうか。
 一つの目しとして欧米を見ると、フランスは一〇五九円、イギリスは一〇三二円、アメリカでは六八〇円から八五六円に引き上げている。先進国と比較しても、日本の最低賃金は低額である。
 わたしの住む秋田県では九月末に秋田地方最低賃金審議会を開き、それまでの六一〇円から八円引き上げて、1時間あたり六一八円にした。前述のように、日本で最低の時給である。これを受けてジャスコ能代店ではそれまでの時給六一二円を六二〇円に引き上げている。
 時給六一八円で一日八時間、月に二二日間働いても一〇万八七六八円となる。これから諸経費などを引くと、手取りは一〇万円を切るといわれている。秋田市の生活保護水準は一〇万八八一〇円なので、ワーキングプアー(働く貧困)は解消することが出来ない。
 「全国最下位の最低賃金では、共働きをしても生活は苦しいうえに、若者の流出に歯止めがかからず、地域が衰退していくばかりだ」と労組では六一八円の最低賃金に異議申し立てをした。そのため、再度審議会が開かれ、最低賃金の改正について審議したものの、六一八円が適当との判断で引き上げはなされなかった。
 昨年の参議院選挙の時には、民主党、社民党、共産党もこぞって、最低賃金は「時給一〇〇〇円」を公約とした・しかし、現在では「時給一〇〇〇円」は実現していないが、「時給一〇〇〇円」を望む声は、臨時・パート・アルバイトなどの間では強いという。

中小零細企業と最賃制

 ここにもう一つの資料がある。厚生労働省が二〇〇七年七月に調査したもので、「一万一一二〇事業場中、七〇七事業場で最低賃金法五条違反(最低賃金以上の賃金を払っていない違反)があり、違反率は六・四%に上るという。最低賃金を守らない企業がこれほど多く、一部からは「最低賃金を守らない企業や経営者は厳しく罰するように法改正すべきである」という声が出ている。
 だが、五条違反をしている中小・零細企業の実態はどうなのだろうか。なかには支払能力があっても支払わない悪質な業者もいるだろうが、そういう業者は厳しく罰するようにすべきだろうか。しかし、筆者が取材した秋田県能代市内の零細商店の実態を見ていただきたい。
 Aさんの所では経営者夫婦の外にパートを五〜六人雇い、おにぎり、弁当、惣菜などをつくり、店売りの他に配達もしている。能代市では評判もよく、弁当や惣菜などはよく売れている。店主Aさんの話。
 「おにぎりとか惣菜は、よく売れている。ただ、能代市そのものが景気がよくないし、いちばん会社が多い木材や土建は昔から低賃金なうえに、最近になって不況型の倒産がひんぱんに起きている。そのため、売る商品の価格を安くしないと、なかなか買ってくれない。また、能代にも大型店が多く出店しており、まるで大型店の展示場みたいになっている。大型店の安価な、大量販売に客が走っていくので、それを食い止めて客が来るようにするには、品質をよくして価格も安くしないといけない。うちのような小さな店は、資材を大量に買うことが難しいので、大型店にくらべると仕入れの面でとても太刀打ち出来ない。月末に仕入れた材料や光熱費などを支払い、パート代を払うと、手許に残らないこともある。この一カ月、朝は五時ころに起き、晩は九時まで店を開いて頑張ったのに、夫婦には給料分が残らない。働いている人には申し訳ないが、最低賃金さえ払うのが苦しいというが、うちの店の現状です。」

地域経済の底上げが必要

 Bさんの店は呉服と洋品を商う、能代市でもトップクラスの老舗。木材会社の景気がよかったころは六割が呉服の売上だったが、現在は一割くらいに落ちている。洋服も高速道路が開通してから、高価な買い物とか嫁入り支度などは秋田市とか盛岡市へ車で行き、買ってくるようになったので売り上げは年々減っている。若者の不足が、それに拍車をかけている。六人は全員社員にしているが、給料は上げられず、我慢して貰っており、いつ店を閉じるかを考えているという。
 働く立場からすると、物価高の中で最低賃金は安い。だが、小・零細商店からすると、その賃金さえ支払うのがやっとの状態である。地域経済の底上げがないと最低賃金は守られないが、地域格差がいっそうひろまる中で、いっそう難しくなっている。


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