第86号(2008年2月号) 1・26グローバルアクション 斎藤建材事件判決

格差なくせ!貧困なくせ!
非正規の労働者のた めの協同センターを!
当面する労働者派遣法を99年以前に戻す
新しい立法化を全国闘争に!
世界社会フォーラムの風を今ここに
1・26グローバルアクション in東京・あらかわ

「非正規労働者の未来と労働組合の役割」…分科会報告(上)

 この集まりは、資本のグローバリゼーション・新自由主義に対抗する“世界社会フォーラム(WSF)の風を今ここに”を合言葉に、「もう一つの世界は可能だ!グローバルアクション」の一つの分科会として、連帯ユニオン関西生コン支部の企画・呼びかけで、1月26日、東京都荒川区のアクト21で開催されました。この分科会には、全国各地から約70名の参加がありました。
第一部のパネルデスカッションの発言者は、アドバイザーとして関西から管理職ユニオン・関西の仲村実、東京から派遣ユニオンの高井晃さん、パネラーとして東京のガテン系連帯の池田一慶さん、アルバイト・派遣・パート関西労働組合の有川さん、国労岡山の山本真也さん、連帯ユニオン関西生コン支部の西山直洋さんでした。
 冒頭、アドバイザーから非正規の労働者のための協同センター構想の提起や、労働者派遣法を99年以前に戻すための進行中の取り組み、新たな法制化闘争の報告・提起がありました。(別途囲み記事参照)
パネラーの山本さんからは、国鉄の分割・民営以降の営利を優先して安全が軽視、線路の検査部門もほとんど外注化、契約社員・派遣社員が多く配置をされている現状報告と、出向者や本当に劣悪な環境に置かれている下請け・孫請けの労働者を組織するための交通ユニオンを作る決意がありました。西山さんからは、05年以降の権力の弾圧、2審で武委員長の実刑判決阻止することができたことへのお礼、生コン業界での07春闘の成果報告、労働者供給事業・日々雇用労働者の闘い、自らの産業政策闘争を他の業種・業界にも広げていきたいとの考えが述べられました。
第2部として、会場の参加者からの闘争報告や意見がありました。名古屋のトヨタにおける派遣労働現場の実態、東京で水道検針をやっている委託会社の労働組合から入札をめぐる闘いと組織化の話、関西から郵政民営化の中での委託契約下の小包労働者の請負労働を正規労働に変える闘い、山谷・釜ヶ崎の労働者から現状と闘いの報告がありました。
 最後に、分科会責任者の西山さんの集約発言をもって終わり、その夜の1・26全体集会に合流しました。(西山さんの集約発言は別枠の囲みを参照。)
 こうして、関西生コン支部の呼びかけで東西から闘う労組が出会ったこの『「格差をなくせ!貧困なくせ!」非正規労働者の未来と労働組合の役割』分科会の試みは、準備期間の短かさにもかかわらず、焦眉の非正規労働者の問題を、こうした世界同時行動のなかで取り上げ、驚くべきその実態とともに若い非正規労働者が語った闘いの生き生きした報告が、日本の労働運動の再生がどこに、どのように形成されつつあるのか、今後の意識的運動の方向のきっかけをつかむ意義あるものとなったと思います。
 以下、パネラーからのと会場からの報告要旨と、アドバイザー報告のポイント、分科会の集約要旨をまとめて報告します。(報告と文責 仲村実)
注−紙面の都合上、報告全体の第一部のパネラ−の報告要旨の部分と分科会の集約要旨を(上)として今号に掲載し、第二部の会場からの発言の報告要旨、参加者の感想などを(下)として次号(3月号)に掲載させていただきます。なお、分科会の概要は、「レイバ−ネット」に短い報告が流されており、今後『労働運動研究』にも取り上げられる予定です。−−編集部


第一部 パネラ−の発言から
池田一慶さん(ガテン系連帯)の報告

 僕自身は日研総業という大手の派遣会社から日野自動車に派遣されて、昨年の8月まで2年間働いていました。労働条件がひどくて、どうにかせねばならんと仲間を集めて一昨年の10月27日、日研総業ユニオンというのを作りました。その後、工場前でチラシまきをしたところ、フルキャストセントラルの人が「実は個人的にもめてた。これ以上つぶされてもいかんから、ちょうど組合を作っていたところだ。」と、あっと言う間に仲間が増えました。去年は日野自動車を中心に、日研総業、フルキャストを相手どって団体交渉と行動をして、様々な成果をあげることができた。
 日野自動車では3つの雇用形態があって、それが同じラインにマンダラ模様のように混ざって働いています。まず正社員、全体6500人いるうちの3500人。それからその下にあるのが期間工。これは直接雇用の有期ですね。有期契約社員、2ヶ月、3ヶ月の反復雇用をする。そういった期間工2000人。そして残り1000人が派遣会社。派遣会社は10数社あります。それも入れ替わり立ち替わりですね。主なところとは、日研総業、フルキャストセントラル、日研総業の兄弟会社のような日研コウサクというのがある。残りは10数社は、4人とか5人とか。賃金、労働条件は大きく異なり、役割も少し違っていて、正社員はだいたい熟練工といってよく、かなり難しい作業で、だいたい3年ぐらい出来るようになるまでかかる。

■深夜残業が月に60時間やって
 240万円、日勤だけなら200万

 期間工と派遣は、これは同じ仕事で、いわば、半熟練とか非熟練とか言われる労働。僕の仕事の場合は、単純労働で1カ月ぐらいあればだいたいまわせるようになる。僕がやっていたのは、機械にその鉄のリングをはめて、加工ボタンを押して、それができたらまた新しいものにかえて、またボタンを押す。これをまあ一日120個も150個も作るわけです。これを延々とやるという仕事。賃金は全然違う。正社員は500万円ぐらい。これは年功賃金で、期間工はだいたい370万、380万ぐらい。
 僕は昼夜2交替、1週間ごとに昼と夜が入れ替わる生活です。朝8時から5時。夜勤も夜8時から5時と、昼と夜がくるくるまわって。それをやっていると、だんだん自分は常にいつでも眠れる体になって、とても便利なんですが。そういうのが普通になってしまうぐらいにおかしな仕事をして。それで大体深夜残業が月に60時間ぐらい。それでたった240万円しかない。もし昼夜2交代じゃなくて、日勤だけだったら200万とか。私たちは、一番下にいる労働者となっています。
 私たちの寮は、寮費3万5千円。光熱費、家財の備品代でだいたい4000円、こたつ・エアコン・テレビとかで一日120円。それからエアコン代だけ別で一日150円。全部あわせて4万円ぐらい取られる。そして雇用は不安定。1ヶ月から3ヶ月の更新。僕は2年半働きましたけども、その間に10回以上更新しました。10回以上更新するというのはとても恐ろしいことで、常に失業している状態が続いているということです。派遣会社との雇用関係が切れれば寮から追い出される。僕の場合は若いから、体も丈夫だしよく働く真面目な人間ですから、次が必ずあるが、だいたい40代、まあ35ぐらいからだんだんきつくなる。日雇いも同じだと思いますが、本当に捨てられてしまう。しかも低賃金で蓄えが全くできない状況になる。そうすると人間どうなるかというと、なんとかしてそこに残ろうというふうになってしまう。卑屈になっていってしまう。

■人間、こういう状況に
 追いこまれると、卑屈になる

 要するに、派遣という立場は、お客様である日野自動車の人間から気に入られることが必要なんで、そして即戦力を求めら、弱音もはけないし、遅刻もできない。ましてや怪我とか病気で休むなんてとんでもない。これが今の製造工場です。労災だって何だって、本当は責任があるのに、それを回避する。こういった労働条件の下で、人は長く働くことはとてもできません。精神的にはピリピリするし、特に若い世代はすごく孤独ですね。もっとひどいのは、夜勤、昼夜があってやっと食える仕事なのに、昼勤だけにする。夜勤がなくなったら、月に片手減ります。とてもやっていけないというので、我慢しきれずに辞めてしまう。そういうふうにして、転々とする生活をしていると、やはり人間的にとても苦しめられてしまうわけです。

■ガテン系連帯を立ち上げ、
 楽しく解放感に満ち、成果も上がった

 ガテン系連帯を立ち上げて、僕らはとても楽しくてしようがなかった。苦しい状況にありながらも、自分たちがそういうことを押しのけてやってきたという解放感に満ちている。本当に仲間ということなんです。
 それで、成果もあがっています。特に日研総業では大きな成果がありました。まず日野自動車では、時給1150円だったのが1年働いたら1250円になった。それから寮費が、地域によって値段が違うが、最大1万3千円安くなった。それから、寮の部屋には鍵がなくて、盗みが横行し、とてもプライバシーなんてへったくれもなくて。業務担当が、「池田君どうしてる」「どうもこうも、僕は今、寝てますよ」とそんなことが時々あった。「このやろう」と。本当に当たり前に入ってくる。それに鍵がつくようになった。それから大きかったのが、期間工と同水準の労働条件にしようと明記させた。
 そして実はですね、単に、僕らが激しく闘い、社会的にも認知されて動いたというだけではないですね。これだけ多くの非正規社員が製造業のラインの中枢に入っている。またそれによって派遣会社が儲けているというのは、とてもいびつな構造で、不安定な構造。僕らも日々暮らしですけども、あちらも日々暮らし。ただでさえ人は減っている。そういう中で、派遣業界はもう無法状態。無法状態ということは賃金ばかばか下がるし、労働条件は悪くなる。それは派遣会社からすれば、自分たちの派遣料金も下げられてくる。そういった状況の中で、向こうもこちらを引き留めざるをえない状況が、起きています。

大事なのは仲間
船場吉兆 有川洋美さん
(アルバイト・派遣・パート関西労働組合)の報告

■突然のテレビ報道で食品偽装を知って

 大阪・船場吉兆の心斎橋店でパート従業員として11年間働いてきました。船場吉兆のほうで食品偽装事件がおき、従業員が大量に職を失うことになりました。約180人の従業員のうち、110名が形としましては希望退職ですけれども、解雇に近い形で職を失いました。退職金なども一切なく、有給もとらない状態で、1ヶ月の給料保障のみで。
 従業員に説明がない状態でテレビの放送が始まり、職場の仲間から「テレビをみたか」とか、慌ててインターネットで調べてみたり、そういう状況が随分続きました。一切説明もなく、店の責任者に聞いてもその人もわからない状態で。そういう中で大阪府警が本店、家宅捜査というニュース。私はフロントですが、後輩と一緒におりまして、これはもう逮捕者が出る、イコール単純に倒産で仕事を失う、と考えてしまいました。
 慌てて知人の紹介で組合のほうに相談に行き、私は人数が必要であると考えたので、女性の仲間の中でも気の強いはっきり発言するようなメンバーに声をかけて、組合事務所で説明をうけました。できれば穏便に終わらせたい。できれば会社のほうから、何かしらの保障とか説明があれば、それはそれで終わらせたいという気持ちがすごく働いていました。2、3日待ったのですけれども、なしの礫で週明けに10数名加入して、翌日に直接、船場吉兆本店に団交申入書を手渡しに行きました。社長や女将さんとかにはっきりとものを言ったことがない状態ですから、その恐怖を越えないと前には進めないと思い、直接、持っていきました。やはり非常に「怖い」という意識がいっぱいで、その後も震えがとまらない状態でした。

■経営者と対等に発言する権利があると、学ぶ

 団体交渉を数回続けていく中で、その「怖い」という気持ちは消えてきました。「経営者も同じ人間なんだ」「自分たちは対等に発言する権利がある」と、学ぶことができました。例えば有給休暇など、みんな知らず、
組合のほうで冊子を見せてもらって勉強をしていく中で。どうして学校で教えてくれないのかなと思いました。だから今後は、社会に巣立つ寸前とかに、高校で就職する生徒たちには、自分たちの権利が今の法律の中で具体的にこういう権利があるんだと、教えていかないと。

■吉兆は、「鬼の住む館」

 今日も東京吉兆のほうに要請文というのを持って行った。東京吉兆の女将さんがいました。やはり「怖い」と思い、服従的な体質がやはり見えました。
 船場吉兆では、「ご主人」「女将さん」「若ご主人」「店長」という形で、4人の家族が経営者だった。本店は「館(ヤカタ)」という言い方をします。すごく独特で、先輩の仲居さんを「お姉さん」というふうに呼び、お姉さんたちは館でご主人のことを「お父さん」と呼び、女将さんのことは「お母さん」と呼ぶ。家族的ないい感じですけれども、そこに入れない人間には、「鬼の住む館」のような怖いとこです。調理人の中には料理長がいて、あと帳場、フロントですけれども本店のほうでは女将が仕切ります。
 給料ですが、調理人が一番いいように皆さん錯覚になると思いますが、実際は調理人が一番悪く若い子で手取り12万。朝は6時、7時から夜は早い時で9時、10時ぐらいまで働く。包丁を研いだりいろんなことをしますので12時ぐらいまで残る場合もある。休憩時間も決まってなく仕事があればやり続け、かなり劣悪な状態。一切の手当が出ない。料理長、仲居頭にも一切決定権もなく、心斎橋店ですと支配人的な男性社員がいますがこの人にも決定権がない。全て家族の4人に指示を仰ぐような形になります。
 「吉兆」という看板がもらえるので、調理人に関してはそういう状況でも続くが、パートのほうは時給で、働いた時間だけ。パートの人は、ダブルワーカーという形になっていきます。仕事、生活が不安定な感じになります。
 あと労働基準法違などですが。まず雇用保険、健康保険、厚生年金がついている人とついていない人がいる。有給休暇はついていない。私の職種の場合は、午後10時を超えるのは当たり前で、遅い時は11時半まで。この深夜手当割増は一切ついてない。フロントだったので、レジの打ち間違いなどした場合は必ず弁償です。そういった違反に対して、自分にどういう気持ちがあったかということですが、有給休暇を取れることは知らないし、残業・深夜割増手当が出てないのは知ってましたけれども、こういう会社だから仕方がないとあきらめていました。

■組合に加入し、
 権利を自分のところに奪い返した
 今回、組合に加入していくことで、労働三権の行使を全部でき、それはすごくいい経験になったなと思います。まず、団結権を使って思ったことは仲間との連帯感。本当に爽快感がありました。あと通知したことによって、最初は怖かったけれども、逆に会社側は何も言いませんでしたので、自分は法律によって守られたんやなという安心感もでました。団体交渉権を使うことによって、経営者へ意見を述べることができるという事実と、その交渉で少しずつですけれども、権利を自分のところに奪い返した時は、やはり、仲間と一緒に喜んだ。争議権ということで、これはもう、怒りを解消することができたので、本当にこれ以上の爽快感はなかったです。

■自分たちに富を集中させる
 経営者側に問題
 今回のテーマについて、私なりになぜ格差が広がっていくのかを考えたんですが、経営者側に問題があると思います。最低限の権利を与えることもしないで、自分たちのほうに富を集中させていっている経営者がいるということです。実際、そういう権利を行使させると会社が潰れるなんて言いますが、そういう人に限って船場吉兆に食事しに来たりとか、大きいお家に住んでいるわけですから。ちょっとでも従業員に権利を使わせてあげる、権利を使わせると雇用も増えると思うんですね。そういった感じで、経営者が富を独り占めしない形で、社会に分配していくようなそういう国になったらいいなと思います。最後ですけれども、大事なのは仲間だなと思いました。(次号(下)の会場からの報告に続く)


分科会全体の集約
今後もこういう取り組みを

連帯ユニオン関西生コン支部の西山直洋さんから

 責任者の連帯ユニオン関西生コン支部の西山さんは、山谷や釜ヶ崎の現状、野宿労働者の実状、生存権すら認められない状況を強いられている人の現実を把握し連帯する闘いの重要性を確認しました。また、拡大する派遣やパートなどの非正規労働者、ワーキングプア層の現実、このことを克服するための未組織労働者の組織化、大きな意味では労働組合が力を付けていく以外にない。それは、旧来の企業内の労働組合、いわゆる企業内組合の組合員の利益だけを擁護するというのではなくて、労働者全体のことを考えることである。
 さらに制度・政策の問題として、当面、現行の労働者派遣法を99年時点に戻させる、そして派遣法自身を廃止させていくような大きな社会運動にしていくことである。現実は、資本の分断攻撃にのまれていってしまっている。だからこそ、「格差をなくせ・貧困なくせ」というテーマで分科会をやったこと、今後もこういう取り組みを一緒に継続的に集まる機会を作りたいと結んだ。


斎藤建材事件・大阪地裁判決に抗議する声明
2008年2月5日

 全日本建設運輸連帯労働組合中央執行委員長 長谷川 武久
 全日本建設運輸連帯労働組合近畿地方本部執行委員長 戸田 ひさよし
 全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部執行委員長 武 建一

 昨日(2月4日)午後、大阪地方裁判所第9刑事部が斎藤建材事件の判決を下した。
 内容は以下のようなものであった。
■Y執行委員  傷害罪で懲役1年6カ月、執行猶予3年(求刑1年6カ月)
■M執行委員  傷害罪につき無罪(求刑1年6カ月)
■W組合員   器物損壊罪で罰金20万円(求刑1年)
■N執行委員  公訴棄却(求刑10カ月)
 この裁判では、公判がすすむ中で、4人全員にきっぱりと無罪判決を書く以外に裁判所の選択はないことが明らかになった。それにもかかわらず、裁判所は今回の判決で、M執行委員に無罪、N執行委員の公訴を棄却したにとどまった。他方、警察と検察の顔を立てることに腐心して、むりやりY執行委員らを有罪した。その意味で、この判決は政治的作文といわざるをえない。

 あらためて振り返るまでもないが、この事件は、斎藤建材(大阪府高槻市)という生コン会社の労働組合弾圧に端を発している。残業代の不払い、昼休みも有給休暇もない、社会保険もないという法律違反だらけの職場で、労働者たちが連帯労組関西地区生コン支部に加入すると、斎藤建材は山口組系暴力団を会社役員に雇い入れて組合つぶしを開始。団交を拒否すると同時に、暴力団が組合員に「会社をとるか、組合をとるか」と迫った。そして、その脅しに負けなかった組合員4人を会社は懲戒解雇したが、昨年夏までに、懲戒解雇については大阪府労働委員会、大阪地方裁判所で全て組合員が勝利命令、勝訴判決を獲得している。こうした会社に対する団体交渉の申し入れ(07年3月)という正当な労働組合活動に強引に介入し、むりやり刑事事件を仕立て上げたのが斎藤建材事件である。大阪府警は2カ月後の5月、組合役員ら4人を逮捕。無罪を主張するかれらを、大阪地検は、接見禁止のまま95日間も勾留した。
 検察はこの事件で、団体交渉申し入れに出かけた組合役員らと会社の従業員Aのあいだでもみ合いがあり、そのAが転倒したのち負傷したことをとらえてY執行委員とM執行委員を傷害罪で、また、もみ合いの際に、別の従業員Bがバイクで突進してきたのでW組合員がキーを抜いて再発を防ごうとしたこと、ビデオ撮影していた従業員のカメラをN執行委員が取り上げたことを、それぞれ窃盗罪として起訴した。

 これに対し、大阪地裁判決は、まず、Aに対する「暴行」について、犯人の1人とされたM執行委員については、「Aの犯人識別供述には、その信用性に疑いを入れる余地がある」、「MがAを暴行した証拠はない」として無罪だとした。
 だが、Y執行委員については、かれがAを殴ったり蹴ったりした証拠がないことを裁判所は認め、しかも、「Aが組合員ともみあっている状況を目撃した」と称する会社側証人も「Aを実際に暴行している人物について特定できない」ことも認めているのに、無罪としなかった。裁判所の理屈はこうである。Y執行員は直接に暴行を加えていないかもしれないが、他の(氏名不詳の)組合員がAに暴行を加えていたことを認識しながら、これを制止したりなどしていない状況に照らすと、「他の組合員と共謀したと優に認められる」、だから有罪だというのである。
 Aに「暴行」を加えたのがY執行委員でないことは裁判所も認めざるをえないし、実際に「暴行」した者は特定できない。そればかりか、そもそも「暴行」なるものが存在したかどうかすら疑わしい。それでもY執行委員は有罪だというのだからおそれいった話である。ともかく誰かを犯人にしないと警察と検察のメンツがつぶれる。そう考えて裁判所はY執行委員を生け贄にしたと理解するしかない。
 N執行委員とW組合員に対しても同様である。N執行委員については会社側から有効な告訴がないことが明らかになり、裁判所は公訴棄却とせざるをえなかった。しかし、W組合員については、団交申し入れ中の組合員らにバイクで突っ込むというBの暴力的行動は不問にしておきながら、Bに再びそのような行動をとらせないようにキーを抜いたW組合員の行動を犯罪だというのである。
    
 このように大阪地裁の判決は、斎藤建材事件の本質を見ようとはせず、正当な労働組合活動に介入した警察・検察の不当な行動をかばい立てしたものであるというほかない。
 大阪府警と大阪地検は、連帯労組関西地区生コン支部に対する一連の弾圧政策の延長線上で今回の事件をむりやり創作したことは明白である。そのかれらの無法な権力濫用が、奴隷的労働条件からの脱出をめざした労働者の正当な権利行使を、暴力団を使ってつぶしにかかった斎藤建材の反社会的行動をかばい立てするものとなっている現実を、裁判所は直視すべきである。

 この間、平和フォーラムや交運労協に加盟する各単産、さらには各地のユニオンなどから無罪判決を求める緊急署名活動に絶大なるご協力をいただき、1カ月足らずで723労組・団体、7,885筆の署名を集約し、いまなお多数の署名が連日到着している。こうしたご支援・ご協力に心から感謝申し上げるとともに、われわれは、この不当判決を正し、4人の組合役員らの完全無罪を勝ち取るたたかいを続け、同時に、警察、検察、裁判所の不当な姿勢を正すたたかいに連帯していく決意を明らかにするものである。                  

以 上 


 第86号(2008年2月号) 1・26グローバルアクション 斎藤建材事件判決