第85号(2008年新年号) 2008年新春労働者座談会 

「協同センター」(仮称)構想の着手を!
資本・経営に規定力を持つ産業別・職種別・運動型ユニオンを!
非正規労働者の拠り所を大胆に組織しよう!
2008年新春労働者座談会
■出席者
高  英男さん(全日本建設運輸連帯労働組合 関西地区生コン支部 副執行委員長)
後藤 利明さん(国鉄労働組合岡山地方本部 執行委員長)
仲村  実さん(管理職ユニオン・関西 副執行委員長)

1奮闘し、前進した一年

――この一年、それぞれが労働運動再生と社会的影響力拡大のため奮闘してきました。とりわけ、関生支部の武委員長の実刑判決を阻止できたことは、関生にとってだけでなく労働運動全体にとって画すべきことでした。最初に、それぞれこの1年どうだったのか、報告ください。高さんから、どうでしょう。

5年ぶりに春闘で
有額回答を勝ち取った


(高)はい。10・31高裁判決で、有罪判決そのものは不当ですが、委員長の実刑判決を阻止できた。まず、関西をはじめ全国の仲間の熱いご支援にお礼をいいたい。委員長が拘束されるのとされないのとでは、我々生コン支部にとっては、大きな意味を持ちます。
 この一年ですが、特に大阪の生コン産業を中心に、07春闘で5年ぶりに5労組の集団交渉で有額回答を勝ち取った。05年に委員長が逮捕されて丸2年を経過していて、大阪の協同組合ですが、労働組合と協力して作った中小専業中心の協同組合運営がゼネコンやセメントメーカーにすり寄って、過剰サービスをして、協同組合の生き残りを図る、そういう形で変質していた。こうした動きに、06年末から07春にかけて、本当に旺盛に動き闘った。その結果、協同組合がメーカーにすり寄る運営から、メーカーと対等な立場で取引ができる運営に変えていく姿勢が、経営側からも出てきた。ところがですね、協同組合がメ−カ−やゼネコンに対等な関係を求める運営をすると約束を交わしながら、実際の運営は相変わらずメーカーやゼネコンにすり寄るもので、毎年の春闘は5労組でやっているのですが、連帯労組以外の4労組が協同組合に追随した結果、連帯対4労組+経営者となった。そういう構図で、春闘以降の闘いの方が、非常に厳しいというか、旺盛に行動しないと状況を変えられないという闘いを余儀なくされた1年ですが、しかし、運動は大きく前進した。

闘いの発展のため、
委員長に立候補

――後藤さんは、国労岡山地本の委員長になられましたね。この一年は、どうでしたか。
(後藤)まず、一番重要な柱である1047名の解雇撤回闘争ですが、今年が解雇されてから20年目の節目です。国鉄闘争が風化しつつあるのも事実ですが、地域の中で広め、訴えていこうと、2月16日に倉敷駅前で48時間のハンガーストライキを行い、組合員延べ約200人が参加し、雨の中で寒かったですがハンストも貫徹した。また4月25日に、尼崎事故から2年になり、「国鉄分割・民営化の破綻と尼崎事故から2年を問う」と、約200名の参加で集会を。権利問題も、この一年間、職場の年休の取得状態、様々な形での要員確保の闘争、サービス労働の根絶など取り組みました。
 9月の地本大会で、私は、改めて地域との連帯、また岡山の地域だけではなく、どんどん出て行って連帯を強め、国鉄闘争や地域での闘いを発展させねばならないという思いから、委員長に立候補した。また、昨年、現在地本の書記長をしている山本さんへの権力弾圧があった。この問題は、本来なら岡山地本として闘うべきですが、共産党系の組合員を中心に「扱うべきでない」という意見のなかで、岡山地本として扱うことができていない。権力弾圧に対して、労働組合として闘うのは当たり前のことで、何故そのことができないのか。改めて国労運動、国労という組織が問題なのだ、と思っているところです。
  
管理職ユニオン・関西結成10年、
新しい形でユニオン運動を


(仲村)僕の方は、今年は、管理職ユニオン関西結成10年目の節目の年。個人加盟の中高年管理職ユニオンとして出発したのですが、現在は正社員の未組織労働者、それと闘わない企業内組合にいる組合員が相談しに来る駆け込み寺として、10年やってきた。もう一つは、約3年前に、派遣・パートを対象とした組合を結成し、現在両方合わせて、500名弱くらいの組織になった。この間の特徴をいうと、一つは、精神的に病んで相談に来る労働者が多い。相談者の半数程は、メンタルな問題を抱え通院しながら職場に行っている人、いじめで出勤が困難になった人など、そういう相談が増えている。もう一つは、我々の組合は「当事者主義・自己決定主義」で、組合加入された労働者の意向を尊重しながら、労働者として協力・協同して、一人では出来ないことをユニオンとして取り組んできた。
 今、名前も含めて、登場した時代的役割が終わったことを確認し、これからどうするのか。もっと大きな地域で、新しい形でユニオン運動を作ることを、可能な労組と協力してやろうではないか、という議論をこの一年続けてきました。

武委員長の実刑阻止の力となった
反弾圧戦線の構築


(仲村)武委員長の実刑阻止の成果の話ね、これは反弾圧の闘いの意義が大きいよね。
(高)そうです。実刑阻止できた要因の一つに、反弾圧共闘を大阪中心に広げてきた闘争がある。元々弾圧は、生コン支部だけの特殊な事情でされているものではなく、国策捜査と位置付け、広範に、弾圧されている色々な勢力に共闘を呼びかけて、一年間、反弾圧戦線拡大に力を入れてきた。控訴審判決前の7月1日に、反弾圧ネットワークを作ろうと中之島剣先公園で実行委員会形式で集会をやった。これが、関西では近年稀に見る約2500人ほどが集まった。以降ですね、委員長への実刑判決をはね返す連続的な動きを、10月の反弾圧シンポジウム、控訴審判決直前の共闘関係の労組などとの不当判決糾弾の集会とデモ、とやってきた。いずれにしても、反弾圧戦線は、まだ立ち上げて間がないので、これからあらゆる弾圧をゆるさない戦線を、関西を中心にして全国に広げていく必要があると実感している。
(仲村)あの7月集会は、朝鮮総連との共闘で時宜を得て、韓国からの参加もあり、国際的連帯感もあってすごい熱気だった。岡山の山本さんも発言したよね。
(後藤)そうです。あれで、岡山はすごく権力弾圧との闘いに勇気をもらいました。
(仲村)あの2500人には、関西のほとんどの政治グループも集まって僕らも驚いた。
(高)そうそう、主催者の予想を越え、闘いに弾みがつき、確信を強めた集会だった。
こういうことは、全国にない関西のいいところだと思う。


2格差・貧困と闘う運動戦略

――さて、1985年に労働者派遣法が制定され、86年に施行されました。ピンハネ・間接雇用が法律上は禁止されていたが、特定の職種であれ解禁になり、その後の規制緩和、いわゆる資本のグロ−バル化の中での新自由主義による生き残りをかけた経営団体・政府の攻勢によって雇用形態が大きく変化した。こうした時代の流れの中で、労働者派遣法の制定、87年の国鉄分割・民営化、95年の総資本・経営側の総路線として日経連「新時代の日本的経営」発表へと続く。90年代では、正社員をどんどんリストラ解雇し、雇用構造を大きく変え、より安く使い易い非正規労働者、派遣労働者の拡大が進み、労働者派遣法の指定職種をどんどん解除し、ついに2004年には製造業も解禁され、大手企業の製造ラインは、派遣或いは偽装請負がはびこる状況になっていった。こうした国策としての規制緩和攻撃、「労働ビッグバン」の結果、今日では、就業労働者の3分の1以上が非正規になっている。社会現象としては格差が拡大し、ワーキング・プア、ネットカフェ難民といわれる150〜200万円以下の年収の層が増え、貧困がどんどん増えている。口先だけじゃ、世の中は変わらんというのは、関生の伝統でもあるでしょう。高さんどうですか。

労働運動全体が資本側の攻撃に
屈服してきたその結果、
ワーキング・プア増大の問題がある


(高)非正規労働者や格差の広がっている問題を、単に今だけの問題と捉えると誤ると思う。やはり、労働者派遣法制定反対を、当時の労働組合が果敢な闘いをできずに許したこと。
 87年の国鉄分割・民営化、これは後に中曽根がNHKのテレビで「あれは国労を潰すためにやったんだ」と言うてますね。我々は当時から、“国労を解体するための民営化であり、1047名の解雇だ。国家的な不当労働行為を許したらあかん”と、反対の声を上げて解雇撤回闘争にも連帯した。解雇され苦難の闘いを余儀なくされた労働者、国労というか労働運動全体が、資本側の攻撃に屈服をしてきた。その結果として、今の派遣労働者の増大やワーキング・プアの増大の問題がある、と捉えることが重要だと思う。
(仲村)そう、そう、その通りだと思うね。

雇用権の確保の闘いを

(高)先ほど春闘で5年ぶりに有額回答を取ったと言うたが、言い換えると、5年間は賃上げがなかった。これは小泉政権以降、公共工事がどんどん削減され、建設産業そのものが景気的には随分下降線をたどったことも、間違いなく5労組の共闘や生コン産業にも影響を及ぼしている。結果、本勤労働者と非正規労働者の比率では非正規労働者の方が上回っている。我々は経営状態がよくないということで、労働組合が自らの雇用権を留保、むしろ放棄をしていたのではないのかという総括の上に立って、重要な要求の一つに、人員補充、組合推薦の補充をするべきだと今、昨年の春闘辺りから闘っている。昨年は、数字的にはそんなに多く勝ち取れませんでしたが、大阪や京都で10数名の組合推薦の人員補充を勝ち取っている。
(後藤)生コンの運転手では非正規が増えているのですか。
(高)そうです。組合員が定年退職で辞める。従前であれば、組合員の人数を確保するために会社との交渉の中で、組合推薦の労働者をそこに入れていたのですが、それが今は工場で定年退職でやめた後に人員補充をしないで、日々雇用の労働者になるという構造です。
(仲村)国労はどうなっているの?
(後藤)高さんが言われたように、中曽根が「国労を潰して、総評を解体して、お座敷をきれいにして憲法改悪に結び付けていく」と言った。そうした敵の攻撃は、一貫した階級的な立場を取っていて、1047名の解雇問題に対する政府の流れは何ら変わっていない。国労内―JR内では、直接的にリストラ攻撃は行われていない。その代わり、早期退職制度を導入し、攻撃がかけられ退職した人も多くいる。当初、JR西日本は約5万8千人で発足したが、この20年間で2万1000人の労働者が削減された。分割前は、派遣労働者や非正規の労働者は殆どいなかったが、ここ4、5年で正規から非正規、本来なら正社員で要員を確保していくべきところを契約社員という形で要員確保をし、色んな部門で外注化を行い、JR社員の本来の仕事を外注化しながら、正規のJR労働者を削減している。
(高)駅でマイク放送しているのは、契約社員ということ?
(後藤)駅でマイクなどの案内している労働者、アーバンは外注化で、岡山みたいに地方の小さなところは契約社員がほとんど。保線も当初は作業の部分を外注化してたが、現在では検査部門まで外注化が進んでいる。本来、検査部門は直轄で行うべきだが、国の政策・規制緩和によって外注化するところが出てきたので、会社としては直轄の社員を減らすために極力外注化できる部分については外注化する。そうした制度がかなり幅広く採られている。
(仲村)そんなんじゃ、事故が起きてもおかしくないよ。

偽装請負・違法派遣との
闘う製造現場は派遣社員で、
正社員がいないラインで
低賃金、使い捨て


(仲村)私が管理職ユニオン部分と兼務でやっている派遣・パートユニオンでの駆け込み相談で言えば、時給で“細切れ雇用”といって、2ヶ月、3ヶ月、半年契約、1年なんていうのはざらですよ。雇い止めという解雇の考え方が合法化されている。
 ヨーロッパなどは全然違う。緊急に必要な労働者だけで、それを超えたら正社員にしなければならないという規定に。日本では、とにかく悪用できるようになっていて、相談で飛び込んでくる時点で、本当に「生活できない」という悲惨な例もある。
 また、偽装請負・違法派遣の製造現場での闘いですが、大阪労働局に申告して、闘争を組んで、団交をして直接雇用を勝ち取った。しかし、正社員でなく半年の有期雇用の契約社員。闘って直接雇用を勝ち取っても契約社員の有期雇用で、かえって雇用不安を起こすような事態になっている。本来、労働法は保護法なのに、その保護を全部解除していくのが新自由主義のアメリカ型攻撃なわけ。結果的には、労働時間だって8時間とか週40時間とか規制されていたのが、変形労働時間制とか、ホワイトカラーエグゼンプションということで、ある年収以上は残業代無し。これはまだ法律は通っていないが、そういうことが平気で出てくる。労働時間規制はなくす、有給休暇なんて平気で取らせない、そして未払い賃金は蔓延。大手企業の製造現場はほとんど派遣社員で、正社員がいないラインで低賃金、使い捨て。こうして格差が拡大し、働いても働いてもアパートにも入れない、食えないという年収150万円から200万円のワーキング・プア、ネットカフェ難民といわれる層が増えている。
   
職場でやれることは、
結構まだたくさんある


(高)でも、まだ守られている権利や保障もありますからね。働いている人が、労働者の権利は、本来ここまであるということが分かったら、職場でやれることは、結構まだたくさんあるんですがね。
(仲村)そう。労働組合が本来やるべきことをやっていない。
――要は、この厳しい状況に労働運動総体が全体として後退し機能していない。実際ストを構えるとか、大きな大衆行動を呼びかけるとかというのがほとんどなくて、厚労省の何とか委員会に参加して、結果的には少々修正はさせるけれどもほとんど緩和の方向に行くことを認めている。そこで、話を進めて、今の格差社会、貧困の増大に対して、どのような運動を意識してやってきたか、またやろうとしているか。高さんからどうでしょうか。

企業の利益追求のための
不良製品を出させない

(高)はい。例えば、建設関係で言うと姉歯から始まって、企業が作る製品不信がどんどん進んでいますよね。仲村さんたちが闘っている「吉兆」とか食べものも含めて。関西の内部で議論しているのは、例えば、少なくとも自分たちが作る製品に、労働組合としてどう責任を取るんだ、という観点。生コン産業で言いますと、阪神大震災の時に阪神高速が倒壊した。その時に我々は、コンクリート製品の不備を告発して以降、少なくともきちんとした製品を世に送り出すべきだという取り組みを労働組合としてきた。だから、以降、シャブコンとか、過積みをきちんと摘発をして、今、関西では適正重量、生コンのJISに規定された製造工程を厳密に守っている。そういった工場にはマル適というマークを付与する制度が生まれている。これは、労働組合が企業の安易な利益追求のために不良製品を出すことに対する告発をすることで今のような制度を作り出した。
 日本の社会では、そういった闘いをやっている労働組合がほとんどない。会社の言動や世に送り出す製品をチェックし、告発ができるのは、本来なら労働組合しかない。そうした闘いが国労だけではなくて、他の産業でも労働組合としてないですからね。製品の不良化と労働条件の劣悪さは連動している。本当に労働組合の果たす役割が重要で、もう一回、そういう運動を立て直さないといけない。
 後藤さんのところの尼崎事故など、あれは起るべくして起った。単に運転手の責任という問題では全くなく、経営方針のあり方、国家の政策による人為的事故だ。手厳しいようですけれど、後藤さん、ご意見があれば。

日本の公共交通は、国民の手で
取り戻さなければならない


(後藤)本当にその通りです。国鉄分割・民営化によって作られた民間のJR会社。民間企業になるとは、営利を目的にするわけで、そのためにはコスト削減するために何が一番手っ取り早いかといったら安全の切捨て、それのつながりであの尼崎事故が起こった。安全は絶対に切り捨ててはならないと、闘わなければならなかったが、国労が攻撃を受ける中で弱体化していくのと合わせて、本来自分たちが声を上げて守らなければならない部分についても声を上げることができない。そういう意味では、国労にも事故の責任があり、国労の体質も含めて大きなものがある。
(高)そのところで労働組合が問われるよね。
(後藤)そうです。国労として、改めて企業内の安全問題について、チェック機能を果たしていかなければならない。尼崎事故、岡山での崩落事故や米子での社員の触車などの事故に対して、労働組合としてきちんと会社に対してものを言う。あの事故で明らかになったことは、JRのような公共交通機関に携わる部分が民営化になったことが、まず一番に問われなければならない。以前、イギリスの鉄道が国営から民営化し、また国営となった。日本の公共交通は、いずれまた国民の手で取り戻さなければならないと思います。
   
企業と癒着している
企業内組合の根本問題がある

(仲村)安全・安心とか、製品の規格を守るとかのチェック機能ですね。高さんがいうように、労働組合がチェック機能を持っていれば、内部告発をしなくてもきちっと現場の労働組合がそれに規定力を持つことができる。それがないから、内部告発とか、匿名での訴えとかをもってマスコミで問題になる。その意味で、ほとんどの企業内組合が、そういう機能を実質上放棄している。そこには企業内組合の根本問題があって、企業とある意味では癒着しているから、そういう視点がなくなっている。管理職ユニオンでの経験では、企業内組合があっても、そこで個別の不利益、降格とか減給、いじめとか嫌がらせとか辞めろとかと闘わない。こういう場合は二重加盟で残して、企業内の組合に自分の不利益について闘っでくれと申し入れる。取り組ない場合、または取り上げても全然成果が得られない場合、われわれが団交権を発動する方法でやる。それで成果を得た例がある。その結果、企業内組合が除名してくるわけですが。出来れば、企業内に残って内部で民主化闘争をやって執行部になるくらいのつもりでやってくれと言っている。

マスコミのキャンペーンに
負けない運動が必要


(高)仲村さんに反論じゃないのですが、今言ったようなチェック機能を、本来、労働組合が果たさなあかんのにそうなっていないから、今のような現象があると言いましたね。そこで注意すべきは、国労が分割民営化されるときに、国労が仕事サボって国鉄の運営を圧迫しているようなキャンペーンが張られたでしょ。大阪市職労の問題でも、さも労働組合が仕事をサボっているようなキャンペーンが張られている。こういう問題が起こったときに、労働組合はもっとちゃんと言わなあかんのです。マスコミのキャンペーンに負けてしもうて、なんか労働組合が悪いように書かれている。言うてみれば国鉄の問題も生コン産業の問題もそうですよ、労働組合の元気なところは安全・安心な製品を世に送り出してるわけですから。
(仲村)それは、その通りだと思う。後藤さんのとこはどうですか。

規制緩和がもたらした
安全基準の切り下げ


(後藤)JRの場合ですね。当然、労働組合の安全に対するチェック機能を問われなければならない。もう一つは、国の作ったJR企業、これが経営の部分で破綻してはいけないというのが一方ではあって、会社側が安全基準をどんどん切り下げていっても、運輸局とかの行政がそうした部分をかなり認めてきた。例えば検査周期の延長、検査項目の削減、安全確保に必要な人員を削減する、列車の一人乗務の時間をより多くするとか、行政が認めてきた。労働組合がチェックして会社と対決すると、いや行政が認めたよとくる。今、JR内の一番大きな組合は、行政の範囲内であれば、ほとんど認めている。そうした行政のありかたも、安全問題には大きな係わりを持っている。また、内部からの告発は、処分の対象になるんです。内部の情報を外部に漏らしたり、企業の中の文書を外に持ち出すのも。それで、内部告発とか、内部の問題を外に訴えていこうと思ったら、相当の覚悟がなければいけない。

労働組合は
資本になめられている!

(仲村)そういう現状の根底にも、企業内組合の限界あると思うね。こういう労働組合の態(てい)たらくの現状をよく見ている資本は、労働組合をなめている。あるところで、経営者団体が労働組合を的確にこう評価をしている。一つは、資本に規定力を持つ産業別組織にする努力をしていない。二つ目は、労働者の不満を組織する努力が足りない。三つ目が、世代交代できてない。若い幹部の育成が成功してない。4つ目に、既存の組織を解体したり変革するような視点がない。最後に、ユニオンショップとチェックオフ協定に安住していると。くやしいけど、ここまで、資本に完全になめられている。

3韓国民主労組に学び、産別化と組織改革

―――では、ここまでなめられた労働組合は、どう闘うかです。その問題の最初に、一つの参考として、韓国のこの間の闘いに学ぶことが多いのではないか。この間、韓国政府は、日本の悪い労働諸法を真似して法案化し、労働者を支配してきた。民主化されても、当初は、企業内組合しか認めなかった。非正規も日本に比べれば圧倒的に多い。こういう事態の中で、先進的な民主労組が、産業別の組織再編を方針化し、果敢に闘って来た。大手の企業内組合を解体し、個人加盟にすることで産別方式にしている。この点、関生は、日韓連帯の共同闘争しています。韓国での産別化の取り組みなど、どうですか。

韓国では、体張って
日本型労務政策を打ち破った


(高)うちの旧館(関生会館の)4階に、「日韓民衆労働者連帯」というのを作って、口先の連帯でなく多国籍資本との共同闘争をしている。関生は事務局をやっている。今話があったように、韓国の民主労組はどんどん産別化している。ほんまに韓国の労働条件というのは劣悪で、戦前の日本の労働運動もそうだったが、体張って命を懸けで闘っている。そういう厳しい闘いは、企業内だけでは闘えない。日本の歴史でも、それははっきりしてる。闘いをやればやるほど、組織を産別化して産業の中でどう闘うんやという視点がないと、労働者側が闘えん。だから韓国の労働組合が、これまでの個別企業との闘いから、どんどん産業に拡がり、それが全国化しているのは、必然的だ。
 そういう意味では、韓国労働者は、日本型の労務政策を打ち破っている。韓国の闘いから、日本の労働運動は学ぶことは多い。生コン支部も日本では珍しい産別組合で産業政策を掲げて闘っているし、管理職ユニオンも個人加盟という視点で企業を超えて闘っているから組織が拡がってる。仲村さんが言った、資本側が5点ほど挙げた話ね。資本・企業が、ここまで労働組合をなめくさった評価を堂々と言えるのは、日本の労働組合はあって無きがごとく、ということでしょう。
(仲村)そう、しかし関生支部はこの5つについてほとんどクリアしているよ。
(高)生コン支部で言うとね、世代交代とか若年層の幹部の育成というのは、今、一生懸命取り組んでいるところで。また、従前の生コン支部集中型から各地域の分散型に組織形態や組織運営を変えようと、7年間ほど取り組みを進めている。つまり執行部集中型から各地域の執行部型に、縦から横へというかピラミッド方式から変えていこうと。
(仲村)その内部改革は重要なことだね。なかなか、やれないが。
(高)執行部としては、自分たちの従前の意識をまず変えるということだから、執行委員自身にはね返ってくる問題だからきついよ。(笑い)でも、ここをやり切れないと、組織は発展しない。
――高さんが執行部集中型から各地域の執行部型にと言っています。国労の方はいかがですか。

地方独自でストライキを
行えるような組織体制に


(後藤)お二人のやり取りを聞いていて、国労の組織のあり方を問われているなあ、と。
JRは、オープンショップで、新規採用者は色々な労働組合の話を聞き、自分が思う労働組合に入るのが本来の姿です。しかし分割民営化以降、新規採用者で国労に入る人が全くいない。というのは、配属が決まる前に西労組に入る。そうした、会社と組合が一体となった組織の加入ですね。この点に、どうにかして風穴を空けていかねばならない。4月にむけて取り組みを強化するつもりです。
(仲村)その点、岡山国労OBの亀高さんが、国労敗北の大きな根拠に組織の中央集権制の問題あり、と言っているよね。
(後藤)そうです。国労組織のあり方については検討すべき点がある。その事が国労の各地方の弱体につながっている。例えばストライキひとつ行うにしても、中央本部の指示がないと地方独自でストライキを行えるような組織体制にはなっていない。そのことが地方の運動を押さえつけている。また関連企業の労働者や契約社員、外注で働いている労働者、ここをどう組織していくかが問われている。そのことに直接国労が手を差し伸べることができるのか、あるいは交通ユニオンのような形でJR関係の労働者やまた民間の私鉄他で交通にかかわっている労働者とが、一つになれるような幅広いユニオンが構想できたらと考えています。

4ピンチはチャンス!
 格差と貧困なくす運動戦略を鮮明に
 労働学校の共同事業
 「協同センター(仮称)」構想を

――最後に、「08年、どういう構想で闘うか」について。関生の武委員長は、よく「ピンチはチャンス」と言いますね。労働組合運動の現状は非常にピンチで、それを再生し階級的に発展させるためには、相当の意識的な取り組みが必要です。特に、資本のグロ−バル化と新自由主義政策による格差社会の進行、つまり階級社会の深化ですが、その中で格差・貧困をなくす闘い、非正規労働者の組織化の問題と企業別から産別化の問題は、労働運動再生の戦略的運動課題です。08年、それを、どう闘いますか。

(高)じゃあ、わたしから。確かに、うちの委員長は、「ピンチはチャンスや」とよく言うんです。生コン産業や関生の例を挙げてピンチはチャンスというのを説明したい。
 05年から弾圧が始まり、委員長が一年二ヶ月という長期拘留をされた。あの弾圧で何が起こったか。僅か1年で、生コンの価格が1立方メートルあたり二千円ほど下落した。言い換えると、生コン支部が関西における生コン産業の企業間競争を抑制したことが、生コン価格を安定させ、中小の経営基盤の安定を確保していたことが立証された。今まで、大阪における生コン経営者達は、連帯労組の生コン産業政策の賛成派と、同時に“関生は激しくてすぐ止めよる。あんなもん、かなわん”という経営者もやはり多くいた。あの弾圧によって、生コン支部が果たしていた役割が、こういう反対派にもわかった。これが弾圧による一面のピンチの要素から生まれるチャンスの要素ですね。
 もう一つ共闘関係で言いますとね。今まで一つの集会に絶対に同席しない政治・党派関係が周りにはあった。だけど、弾圧で生コン支部が支援を呼びかけたら、こういう同席せえへんような勢力・団体が一緒になって、反弾圧戦線ができる土壌が出来た。これも弾圧と言うピンチの一側面から生まれた、チャンスの要因です。
(仲村)よくわかるね。それからこの間、いろんな集会で武委員長が提起している方針、「協同センタ−」構想、あれは大事だ。

スケールの大きい二重加盟も
含めて地域合同労組構想


(高)それを、今から言おうと思っていた。(笑い)つまりね。生コン支部が生コン産業で積み上げた成果を、地域にどんな格好で共同のものになるように広げたらええんやというのを、一生懸命模索している。共同事業による「協同センター」構想。イメージで言うと、スケールの大きい二重加盟も含めた地域合同労組を模索しようやないかという呼びかけです。それぞれの組織実態もあり、すぐにとまでは議論は深まっていない。とにかく寄れるメンバーが寄って、共同事業を始めようやないかと、来年の春闘前に共同で労働学校を開こうと。何を学ぶか。ナヨっとしたものでなく、われわれの労働組合がやっている基礎理論、例えばマルクス主義の哲学や経済などのカリキュラムで。なおかつ非正規労働者、若者が職場における不満をなかなかもっていく場がない、そういったことを語り合えるような場を作ろうと考えている。これが、将来の地域における拠点、地域合同労組のような格好に発展していければと考えています。

人権や政治意識の弱い組合に
職場で強固な闘いはできない


 もう1つは、労働組合が企業内化してしまって、本来労働組合のもつべき社会的役割を日本のほとんどの労働組合で果たせてないですね。それは何かというと、過去、労働組合は積極的に人権や差別問題、政治問題に取り組んでいた。そういう取り組みをするから職場における闘いも、足腰強い闘いがやれたと総括している。言い換えると、人権意識や政治意識の弱い組合が職場で強固な闘いをできるはずがない。

駆け込み寺から
職種・業種別産別組織化に

(仲村)高さんのいった構想は僕らが討議してきた方向と一致する。じつは、管理職ユニオンでも11月24日に定期大会を開いて、管理職ユニオン運動はネーミングも含めて知名度は残っているが、基本的には時代的使命は終わったとして、新しい方向を決めた。一つは、個々の労働者の駆け込み寺は必要で、今後、非正規の労働者は増えるし、色々な劣悪な労働条件や、理不尽な形で資本・会社から解雇や雇い止め攻撃を受けるのも増えるから、個人加盟ユニオンの必要性はある。二つ目は、だから大きくはそういう窓口になるようなセンターを、できたら他労組と協力して作る。で、管理職ユニオンは、今は正社員であれば平社員でも組織しており、非正規労働者は3年前に結成した派遣・パート関係のユニオンで作って組織している。将来、できれば大きな意味で駆け込み寺の入口をまず協同してできることから追求しようと。その中で、個々に来た相談・加入した労働者を、できるだけ職種別、業種別、産業別に、部会みたい形で整理をしながら、他でやってる人たちと組織化をしていきたいと、方針を決めた。メンタルヘルスの問題に関しては、去年、「NPO働く者のメンタルヘルス相談室」を併設したので、相談サポートのできるメンバーを増やす、他の労働組合で問題意識をもってもらうような講座を開設していく方針も立てました。
(高)後藤さんのところは、どう?

安全確保、新規採用者の
組合員獲得に取り組む

(後藤)はい、国労の次元でいうと、先ほど交通ユニオンのような話をしましたね。加えて、年末・年度末、国鉄解雇撤回闘争のヤマ場にできる運動を地方からつくって盛り上げていく。これが一つの重要課題です。あわせて、安全確保の取り組みですが、これも年末から年度末、新しく新規採用者が入って来るので、これに焦点をあわせていく。また、関連企業の労働組合はJR連合に入ってないと指名停止、仕事がもらえないので、労働組合を組織しているところはJR連合に入っているわけで、全然組織されていないところもある。そこに国労組合員が出向しているところもあるので、そこの労働条件改善にむけて国労として取り組んでいきたいですね。

沖縄の闘いに連帯し
全国的に運動をしよう


(高)それから、これも組織決定しているのですが。9月末の沖縄で教科書検定撤回を掲げて、11万6000人もの県民が反対の意思表示するという大きな闘いが、沖縄から発信されていますよね。あれは、一つの教科書検定の問題ではありますけど、そこに潜んでいる問題というのは、戦中における軍の集団自決強制の歴史的事実を否定する、言い換えると戦争賛美の教育が学校でなされようとしている。そのことはまちがいなく、現在の米軍再編や名護新基地建設問題、戦争国家づくりのための憲法改悪と日米軍事同盟強化とかそういったところに全部連動する闘いです。沖縄であそこまで大きなうねりになっている闘いですから、生コン支部では、この間、名護新基地建設阻止のためのゴムボートへのカンパなど取り組んできたのですが、この教科書検定撤回の課題を、われわれが関西で闘いを共有して拡大し、私達の連帯労組中央のほうへ呼びかけして、新年の早い時期に東京における全国的な取り組みへと運動を広げていきたい。是非、これも共同して欲しいですね。
(仲村)そのために、何か、具体的な取り組みとか提案があるの?
(高)独自の具体的な闘いとして、内部では教科書検定に潜む問題を「新しい歴史教科書をつくる会」の主張批判の学習の強化、全職場でこの政治課題における職場ストライキを呼びかけて組織する。他方で外へは、連帯共闘を呼びかけるような署名活動をやろうと思っている。われわれの場合、組合員が一人30人以上に働きかける目標数値を設定して取り組み、そうした闘いを通じてこの問題を社会化させたいと思っている。
(仲村)沖縄問題で職場ストライキとはすごいなあ。
(後藤)やれることから一緒にやりますよ。
(仲村)高さんが言わなかったが、08年は1月26日東京で、世界社会フォーラムの呼びかけで全世界同時「グロ−バル・アクション」が、資本の世界に対抗する「もう一つの世界は可能だ」を合言葉に、開催される。これは、7月の北海道洞爺湖サミットに対抗する世界の民衆の闘いへと連なっている。この1・26行動のなかに、生コン支部の呼びかけで「格差・貧困をなくせ−非正規労働者の未来と労働組合の役割」のワークショップが開かれますね。参加しようと思っているところです。
(高)是非、一緒に取り組んでください。
――話が佳境にはいったところですが。この辺で。討議のなかで08年の運動戦略がでました。08年は、米国発のサブプライムロ−ンを震源とする世界的金融危機が日本経済を直撃し、総選挙による政権交代の可能性もあり、ピンチをチャンスに変える大きな歴史的変化の時にあります。労働運動再生と発展が時代の希望を開く鍵となる好機到来です。だからこそ、「協同センタ−」戦略を大きく掲げ、足元から資本なり政府なりを規制し、労働運動が発言力、規定力を持っていくような運動を創り発展させていきたいものです。そんなことを、まとめとして、本日の座談会を終えたいと思います。どうもありがとうございました。


 第85号(2008年新年号) 2008年新春労働者座談会