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2001/12/13

 

 「9・11事件」は、世界を震撼させ、間違いなく時代を画する出来事でした。私たちは、アメリカのアフガニスタンへの報復戦争に反対して、今秋闘ってきました。その中で「テロも報復戦争も反対い」という主張に問題を感じ、同時にまた「私たちは何者であるのか」についても、深く問いかけ、そうした問題について、討論の必要性を感じてきました。折から日本キリスト教団の小田原紀雄さんより、下記のような「広く討論の場を設けませんか」の問いかけがありました。来年以降の反戦闘争の質的発展のために、誠実かつ率直な討論の場を持つことは、意味のあることだと思います。そこで、ここに、小田原さんのご了解も得て、その「呼びかけ」と、相談会の「ご案内」を掲載させていただきます。

 

「世界の中心」を見失って

一緒に討論しませんか?

日本基督教団靖国・天皇制問題情報センター  小 田 原 紀 雄 

 広義の「左翼」がここまで頽落してしまうとは考えもしませんでした。世間では「左翼」の命脈などもうとっくに終わってしまっていることなど承知していますが、わたしは現状に歯軋りする思いでいます。とりわけ9.11後、この思いが強くなっています。もう随分以前に読んだものですが、辺見庸の『反逆する風景』にこんな文章があったことを思い出し、それが脳裏から離れずにいます。

 「内戦と凶作で92年にソマリアでは200万人が餓死寸前まで追いこまれている。/そんな時私はファルヒアに会った。/彼女は避難民収容施設となっていた首都の工科大学の二階か三階の教室にしゃがみこんでいたのだ。一目見て、これは人ではなく『枯れ枝』だな、と私は思った。/彼女は私を見ない。問うても答えない。キスマユという地方からいっしょに逃げてきたという中年女がかわりに答えるのだ。『もう、声もでないんだよ、この娘は。いまは食いものもあるというのに、ちっとも食えないんだよ。あと何日ももたない。もうすぐ楽になるわけさ』/避難民たちは、草の葉、木の根、果ては飢えて死んだラクダの皮までしゃぶり、多数の餓死者を泣く泣く見捨てて首都までたどりついている。/恐怖に腰を抜かしたみたいな姿勢のまま、立てない。時々、力のない咳をする。飼い猫のトイレみたいに土を入れた器に、ほとんど音もなく排泄する。14歳だというのに、30以上に見える。しかし、美しい。観世音菩薩のように美しいと私は思った。彼女は、この世のありとある苦しみを、他人の分まですべて一身に負うた目をしたまま、死に呼びこまれつつあった。それは大慈大悲で苦界の衆生すべてを済度する、どこまでも澄んだ聖なる目である。/その時、なぜだろう、ここに世界の中心があると確信した。/出自も14年の道程も、世界の誰に知られることなく、墓も墓銘もなく死のうとしているファルヒア。ただ飢えの末に死ぬるためだけ存在しているファルヒア。そう、ただ飢えの末に死ぬるためだけに生きてきた、この娘こそが世界の密やかな中心でなければならない」

 長い引用で申し訳ありません。
 9.11後の言説を注意して読んでいるつもりです。そうしながら、わたしどもが思想の核に据えるべき「世界の中心」を見失ってしまっているのではないかという思いが強くするのです。聞くべき声を聞いていないのではないか、と。
 はっきり言います。「テロも戦争も反対」などと口にすることはわたしにはできません。ファルヒアの対局で生きている日本人であるわたしは、9.11のようなやり方に反対ではありますが、それにしても「テロ反対」という言葉を口にしようとしても唇が凍てついてしまうのです。9.11を決行した人々がファルヒアの思いを代弁してはいません。がしかし、わたしどもは9.11の行為の遙かかなたに、かすかなファルヒアの思いを聞き取らなければならないのではありませんか。「左翼」とはそういうものだったのではありませんか。
 宗教が、世界観なき世界の人民のうめきであるなら、「テロ」もまた同様ではありませんか。
 一切の道義のないアメリカとそれに同調する世界の動きに対して、わたしどもが何ほどのこともできないであろうことは承知しています。しかしそれでも、できることはやっておきたいと切望します。
 ズタズタに分断され、分断された現状を克服しようともせずに、その中でなんとか生き延びる道を模索するなどという生き方がわたしどものやり方だったでしょうか。何ほどのことができるとも思っていません。でもこの現状を変えたいという願いだけは強くあります。この訴えを一人でも二人でも聞き届けてくださるならば、ご一緒に討論を開始したいと考えています。可能であるならば小さな運動として展開してもよいとも考えています。種々の実務は担うつもりでいます。ぜひご賛同ください。

 2001年11月21日
日本基督教団靖国・天皇制問題情報センター   小 田 原 紀 雄 
 東京都新宿区西早稲田2-3-18  03-3205-7363 03-3207-3918

第1回相談会の案内                         
12月28日金曜日、午後3時より6時              
場所、日本キリスト会館4階、会議室